憧れの吐息は感情の波に乗って   






05





「じゃあボス、オレこいつルッスーリアんとこ連れてくから!また戻るわ」

「何だ?」

「髪切ってもらうんだよ、こんなんじゃまともに外出もできねーじゃん」

「そうか」

「そういやオレもルッスーリアに渡すモンがあったんだぁ。オレも行くぜ、ボス」

「報告書は明日までに出せ。いいな」

「わかってらぁ」

「スクアーロもルッスーリアんとこ行くの?したらこいつ連れてってやってよ、その間にオレ任務報告した方が早いし」





ベルがそう言ってあたしの頭を撫でる。何だ、ヴァリアーの皆さんは頭をなでるのがお好きなのか?と少し疑問に思った。スクアーロさんはあたしを見て「いいぜぇ」と言ってくれた。





「あ、ありがとーございます、…えーと…」

「オレは、スペルビ・スクアーロだ。お前はだろ?よろしくなぁ」

「よろしくお願いします!」





ぺこっと軽くお辞儀をするとスクアーロさんはふ、と微笑んだ。ずっとその顔でいればいいのに、すぐに元の顔に戻って「いくぜぇ」と言ってドアへと歩きだした。あたしもそれに付いていって、ベルとボスにまたお辞儀をして部屋を出た。






「良かったなぁ、ボスに殺されなくて」

「え!?殺される予定だったんですか!?」

「まぁ、気に入らなかったら、殺してただろうなぁ、運が良いぜぇお前」

「あ、そうなんだ…なんか、得した気分だ…(自分よくやった!)(自画自賛だ)」

「ベルがスカウトしたんだってなぁ?珍しいぜぇ、あのベルフェゴールが」

「そうなんですか?とっても優しくしてくれましたよ」




そう言うとスクアーロさんはびっくりしたような顔であたしを見た後、悲しそうな顔をして「そうかぁ」と笑った。





「これから色々わかってくるだろぉ。ま・困ったらいつでも言えよぉ」

「あ、ありがとうございます!(優しい!)」

「あ、あとなぁ、敬語もいらねぇ。悪い気はしねぇが、むず痒いんだぁ。ルッスーリアとも会ったんだろ?同じこと言うだろうから適度にタメ語使っとけぇ」

「OK!」














ベルと来た道をスクアーロさんと帰る。なんだか不思議な気分だった。ここに来るまでベルはずっと付いててくれたから、もうベルのことは会って数時間なのにすごい信頼してるんだな、と思った。 スクアーロさんは、歩くのが早くてあたしが小走りで付いていくと、それに気づいたスクアーロさんはゆっくり歩いてくれた。イタリアマフィアは紳士だ…!ルッスーリアさんといいザンザスさんといい、 何て素敵な人たちなんだろう…!





「Very Very cool! 」

「あ?なんだぁいきなり」

「ヴァリアーのみんなはすごく素敵!紳士で優しくてとても素晴らしい人たち!」





キャーキャー言ってると、スクアーロさんは哀しそうな憐れんだような、自分を嘲笑うような笑みをみせて「そんな綺麗なもんじゃないぜぇ」と言った。





「オレ達ヴァリアーは何のためらいもなく人を殺す、所謂殺人集団だぁ」





所詮オレ達は戦うことしか能がねぇ馬鹿ばかりだからなぁ、と付け加えた。あたしはそんなスクアーロさんを茫然と見つめた。口が開いていたかもしれない。 こんなに素敵な人たちが、そうだ、人を殺すんだ。そして例外なくあたしも。でも、それでもこの人たちはすごく綺麗だ。そして素晴らしい。





「大丈夫だよ、スクアーロさん」

「ん?」

「みんな、あたしより全然綺麗だもの」



































「邪魔するぜぇ」

「おじゃましまーす」

「あら、終わったのね!?もう、何度見ても可愛らしいわぁ!」





部屋に入ったあたしをルッスーリアさんが熱烈なハグで受け入れてくれた。あああ苦しいけど嬉しいぞそしてなんだか良い匂いがするぞ!(この部屋もルッスーリアさんも!)






「それじゃ、早速始めましょうか?」

「あ、用意しててくれたんですか!?ありがとうっ」

「いえいえ。それでスクアーロはどうしたの?ベルが一緒に来るはずだったと思うけど」

「ベルフェゴールは任務報告中だぁ。それと、お前が言ってた奴、任務先に売ってたから買ってきてやったぞぉ」

「あら、ありがとう!そう、これよこれ!この色が欲しかったの!」





ルッスーリアさんはスクアーロさんからもらった小さい袋から任務先(?)でのお土産を取り出してすごく喜んで居た。 ルッスーリアさん達は背が高くて何を持ってるか見えなかったから近くによってみた。




「なんですか?」

「あぁ、マニキュアよ。ベビーピンクが丁度切れてたから買ってきてもらったの」

「うわ、かわいい!」

「髪切り終わったら塗ってあげるわね」

「本当!?やった!」

「まあまあ」






はしゃぐあたしたちをスクアーロさんが嬉しそうに見ている。ありがとうスクアーロさん、ルッスーリアさんにお土産買ってきてくれて!とても嬉しいよ!





「オレも暇だからなぁ、見てっていいかぁ?」

「どうぞ?そこのソファにでも座ってて頂戴な」

「あぁ」






スクアーロさんが近くのソファに座って、はぁ、とため息をついた。疲れてるなぁ…。ルッスーリアさんがあたしの髪をスプレーで湿らせると、丁寧にハサミで切っていく。





「あら…本当に傷んでるわねー。可哀そうに…」

「ここだけの話、お風呂も満足に入れてもらえなくてさ。歩くのも実は久しぶりで」

「まあ!そうだったの?それじゃあ終わったらあたしの部屋のバスルーム使っていいわよ」

「本当!?ああルッスーリアさんにはありがとうばっかりだなぁ」

「ふふふ、素直でとても好きよ」







ちらりと見たスクアーロさんも笑っていた。ああ、あたしここにきてとても幸せだ。ベルには後でお礼をしておこう。シャクシャクと音を立てながらあたしの髪がパラパラとビニールシートに落ちていく。 其の色は黒なんだか茶色なんだか分らない色で、あたしの髪は本当に傷んでいたんだなあと思って、ちょっと凹んだ。「どのくらいの長さがいいの?」と聞かれたから、ルッスーリアさんの オススメで!と答えた。だってルッスーリアさんはすごくセンスがよさそうだったし。






「きちんとしたらとっても綺麗な髪だと思うわ。今度手入れしてあげるわね」









あぁ、やっぱりあたしとてもこの人達が好きだ!