「おいっ起きろって!」
「…う…?」

目をうっすらと開けるとそこはいつもの見慣れた自分の部屋だった。自分の目には白い天井が映っていて、その手前に金髪のおかっぱが居る。さっきみたいに どうでもいいなどとは思わなくて、ああ帰って来た、と思った。

「どうしたんだよお前」
「なに?」
「なにじゃねェよ!隣で寝てたらなんか呻き声して起きてみたら何かお前苦しんでて!」
「え」
「なんかいきなりびしょ濡れだし身体は冷たくなるしどうしたのかと…!」
「…は?びしょぬれ?」

なんだそれはと思いつつ髪を触ってみると、…確かに、自分は髪もびしょ濡れでパジャマもびしょ濡れだった。おまけに今すごく寒い。極寒の地に裸で頬り出された人がそのまま 帰って来た様にも思えるほどだ。

「ほんとだ…つかさむ!」
「ああほら、あったかいもん入れたから飲めよ」
「ああ、どうも…」

どういう風の吹き回しだろう。ベルがこんなに自分に尽くしてくれるなんて。少し不思議に思いながらカップに口をつけるとツンと鼻を突く匂いが届いた。驚いてカップを除くとそこは 赤い液体がたっぷり注がれていた。

「…ねぇ、ベル」
「なに?」
「これはなに?」
「血だよ」
「誰の?」

「お前の」




気づくと腹のあたりがずきずきと痛んできて、確認すると夥しいほどの血液が流れ出していた。どうして今まできずかなかったのだろう。どうでもいい。…あれ?どうしてどうでもいいなんて 思ってしまうんだろう。ああそんなことどうでもいい。それより此の血をどうにかしなくては…と思ったけど、どうせ何をしても変わらないのだろうからどうでもいい。…あれ?

「…ねぇ、ベル
   あたしの名前、知ってる?」
「ん?あぁしってるよ、  だろ?」
「聞こえないよ」
「  」
「もっと」
「  」
「…だめだ、わからない」
「どうした?」
「わかんない、けど、なんか急に眠気が、」
「ああ、それはきっとこの血の所為だろうな」
「そうだ、ね」
「ああ、あともう一つあるな」
「…それは、何?」





「カミサマに聞きに逝くんだろ?」





だから神様とは

誰だって

聞いてるのに