愛している。そう告げた後の彼女の顔が、忘れられない。



人は二度生まれる。此の世に生を受けたとき、そして、生きる希望を見つけたとき。そして、言葉の通り僕は二度生まれた。ガラス越しのイタリアの青空を見上げる。なんて、広いんだろう。目を凝らしても僕の視力じゃ海の水平線しか見えてこない。向こう側にも、世界は広がっているというのに、僕には、それが見えない。

前まであんなに穏やかだった心が、こんなに擦れてしまって、こんなにボロボロになって、跡形もなく消え去っている。その事実を僕は無視して、自分の願望、望む世界を、くだらない世の中に知らしめるために、僕は沢山の人を殺した。妻子がいるもの、恋人がいるもの、大人になりきれていないもの、その他諸々、全て。邪魔なものは排除。それが今の僕のモットーになっていた。どうしてこんなにも悲しいのだろうか。

少なくとも、前までは、そんな悲しいこと、避けて通っていた様な気がする。彼女が、悲しそうな顔をするからだった。

「また、殺しに行くの?」
「…うん、仕方ないことだからね」
「そ、っか。なるべく、殺さないであげて」

其の人達にもきっと、ひどいことをしていても、大切な人がきっといるはずだから。そういって彼女は苦笑する。なんで君が泣きそうになってるの?問いかけても、答えが返ってきたことは一度もなかった。そんな彼女を、僕は心から愛していた。そう、本当に、心の底から。

その大切なものを、ボンゴレはあっさり奪い去った。まるで雑草を踏みつぶすような仕草で、彼女をこの世から消した。大切なものを、生きる希望を奪われたのに、平静に生活などできるわけがないだろう。だから僕は、仕方なく殺すのではなく、憎しみを込めて徹底的に掃除することにした。あんなに涙を流すのは、まっぴらだ。僕は自分の涙を見たくないためだけのために、此の世界を一掃する。前までは、君の為に生きていたはずだったのに、笑えていたはずなのに、



僕は今だに、彼女が笑いかけてくれることを願っている。



(もう手遅れ)