「やっほー」 やっぱ、こいつは予測できない。 「いやーやっぱり寒いね外は!っていうかあけおめ!」 「あけおめじゃねーよ、ったく。人の迷惑を考えろてめーは」 「えっ迷惑だった?…ごめん…帰るね…」 「あーあーあーあーわかったわかった俺が悪かった、全然迷惑じゃないから上がってけ!」 「わーい」 年が明けてまもなく、がマンションにやってきた。今日外は大分冷えるらしく、こいつの鼻の頭は赤くなってる。 「新年早々一人っきりは寂しいじゃん?っていか元希は呼んでくれないし」 彼女なのにさー、って言いながら炬燵に潜り込んでさっそく蜜柑の皮を剥き始めてる。俺は少し遅れて隣に腰をおろして、炬燵に足を入れた。じわり、冷気に触れていた足先が温まっていくのを感じる。 「チームの打ち上げ終わったのが昨日の夜中だぞ?疲れてそんなことも考えねーで寝ちまったんだよ」 「そんなこったろーと思った!自分で来てよかったほんとに」 どうせ正月休み終わったらまた会えなくなるんだし、と言った後には蜜柑を頬張った。確かに、こいつに会うのは何週間ぶりだろう。もう、随分顔を見ていなかったような気がする。そう思うと急に恋しくなって、の肩を抱き寄せた。は「おっと、」と声を上げただけでおとなしかった。それにしても、おっと、なんて、親父かお前は、と、昔の俺なら突っ込んでいただろうが。もうこいつがこういう女だってこと、俺は十分知ってる。 「…痩せたか?お前」 「えっ、いや、うん、まあちょっとだけ」 少し、焦るような仕草を見せたを見て、わかってしまった。俺が、「ごめん」と謝れば、「何が?」ととぼけるが、痛々しかった。きっとこいつは、俺があんまり連絡もしないから、気に病んでしまうんだろう。と、俺は思って、一層強く肩を抱いた。はゆったりとした動きで俺の肩に頭を乗せてきた。 こんなゆっくりとした時間は久し振りで、心地よかった。 「今日は、泊ってくんだろ?」 「え?いいの?」 「…たりめーだろ」 こんな時間に来たのはてめーじゃねえか、と言っての首筋を撫でると、くすぐったそうに身をよじった。仕返し、と言わんばかりに俺の脇腹を、こしょばしてきて、やり返して、やり返されて、俺達はひとしきり笑った。 「元希」 「んあ?」 「今年もよろしくね」 「…ずっと、の間違いじゃねーの?」 そう言うとは一瞬びっくりしたような顔をしてから、世の中の女の中で一番綺麗に笑った。 (君は発砲水みたいだね) |