ただの、そう、普通の   




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あーつっかれたー!オレが任務に出てから2日目、オレはベネツィア郊外の道路を走る車に乗っていた。ベネツィアなんて近場のマフィア潰しにどうしてオレがいかなきゃなんねーんだよ。スクアーロに行かせりゃいいのに!ってボスに文句言えたらいいんだけどな。こえーんだよなーボス怒らしたら。 まあ結局今回も楽勝だったからいいけど。数だけ多くて実力がないというのも困ったものだ。はあ、と疲れ交じりの溜息を吐くと運転しているスーツの男(今回のオレの付き人、名前は…忘れた!)がやや後ろに顔を向けながら話しかけてきた。







「ベルフェゴール様、予定よりかなり早く終えたので時間が空いているのですが…どこか寄られるところは御座いますか?」
「あー…どうすっかなー。この辺はもう飽きてんだけど」
「このままお戻りになられますか」







何かねーかな、と考えた時、ふいに2日前の事を思い出した。半年前。ストルニー・ストルスの孫。。監禁。…ミラノ。







「じゃあさ、ミラノに行きたい」
「ミラノですか。何かご予定が?」
「いーだろそんなんどうでも。ミラノのファミリーに監禁されてる子供がいると思うんだけど」
「…、ですか?」
「そう、知ってんの?」
「いえ、下っ端のマフィアの中では有名なのですよ。ヴァリアーの皆様など高貴な方々は知ることがないと思うのですが…」
「ふうん。で?」







次の言葉を促すように言った。すると、付き人は(名前はわからないのでもういい)急に面持ちを変えて、まるでこれから怪談をするような雰囲気で続けた。







「そのの両親がそのミラノファミリーに殺されたのは、ご存じですか?」
「そこまでは知ってる。そんでが今行方不明ってことになってて、でも実は監禁されてるってとこまで」
「その子供は、両親を殺害したマフィア18名を、惨殺したのです」







は?







「ありえねーよそんなん!うしし、デマかなんかじゃねーの?だってその子供、まだ15だろ?」
「私も、もちろん皆最初はそう思っていました。ですがミラノファミリーのチームが、2つ、減ったそうです」
「2つ…」








まじかよ。溜息とともに小さくつぶやく。オレはもっと小さい時に自分の兄を殺している。だけど、それとは何かまた、違うような気がした。もっと何かこう、自分とは全く違う関係のない誰かが自分と同じような 事をした。被害に至っては、オレ以上だ。







「あとどれくらいで着く?」
「あと1時間ほどでミラノファミリーに到着するかと」


















「…おもしれーじゃん、















普通の子供だったら、親が二人揃って目の前で殺された日には、普通だったら、おかしくなると思う。精神異常を起こしてどっかの病院にでもぶち込まれていることだろう。 でもこいつは違う。両親を殺された恨みか憎しみか、それかまた別の理由か、とりあえず今はそれしか思い浮かばないけど、そんなような感情で、マフィア18人を殺したのだろう。 ミラノファミリーといっても規模が大きいだけのマフィアで、実力はオレが今日潰したファミリーに比べたらまあまあ強いか、同じくらいの地位だ。 でも、15歳。しかも今まで普通に暮らしていた、普通の女の子供が、18人ものマフィアを殺すなんて普通ありえない。



そこがまた、面白くてたまらない。

























「ボスに電話しなきゃな」


多分オレはこいつを気に入った。