後悔?してないよ、だってオレは今こんなにも楽しい!   






03





「これなんかどうよ?」

「あっかわいい!けど、ちょっと派手かなー」

「じゃあこっちは?」

「うーん」

「なんだよ、文句ばっかかよ、うぜー」

「いや、ごめんだってさ、あたしってずっとこういうの着たことなくて」

「じゃあ、どんなん着てたんだよ?」

「え、なんかワンピース、とか?」

「あーそういえば金持ちだったんだっけ?ならしょうがねーかな」

「…ごめん」

「まあ今日はオレにまかしとけよ、センスいいの選んでやっから。お前は下着見てこいよ、ほら」




札束をに向けると、顔を赤くしながらおずおず受け取った。




「じゃ、終わったら此処来いよ。着せて帰るから」

「わ、わかった!じゃあいってきますっ」




ぱたぱたと小走りで下着コーナーに走っていく。後姿はやっぱり普通の子供だった。

さっき見たは、幻覚だったのか。

そんなはずはないと思う。というか信じたくない。もし幻覚なら、オレはその幻覚に興奮したことになる(それだけは避けたい)。ハンガーに掛かっている色とりどりの古着を手にしながら、あいつに 何が似合うか、と目をこらした。あれ、何でオレこんなに真剣になってんだ?そういえば任務に出る前の屋敷でもそうだった。テレビで流れていたニュースに、オレは無意味に食い付いた。 本当は寄る予定もないミラノに寄って、任務に無かったファミリーを潰した。何で。さっきの後姿を思い出す。






…ああ、そうか!























選んだ服は、これからボスに会いに行くということも目的に入れて、黒で統一した。ま、これで 文句ないだろ、派手目の色は避けたし誰でも来てるような服だし。まったく、王子に文句付けるなんて、大したもんだよ全く。ふう、と息をついて店員を呼んで預かってもらうように言った。オレの髪を見て少し固まったようなそぶりを見せたけど 「かしこまりました」と言ってレジに置いた。




「ベル…フェゴールさんっ」




小走りで駆けて行ったように小走りでオレのところに戻ってきた。




「ああ、終わったの?つーか、何でさん付なんだよ、さっきまでタメ語だったくせに」

「いや、だってなんかよく考えたら、初対面、だし…何も考えずにタメ語だったけど…」

「ベルでいいよ、敬語もいらねーし」

「わかった!」

「服、選んどいたから。なあ、さっき預けた奴、こいつに着せて。」




さっきと同じ店員に声をかけるとパタパタと服を持ってきて、それじゃあこちらですと言ってに微笑みかけた。は苦笑して、じゃあいってくるね、と試着室に入った。









「ねえねえっどうかな!」





しばらくして試着室から出てきたに微笑みかけた。は楽しそうにはにかんだ。




「当然似合うにきまってんじゃん!オレが選んだんだし?」




そういうとに微笑みかけた。はそうだよね!といってパタパタと駆け寄ってきた。後ろからついてくる店員は何が楽しいのかにこにこと微笑んでいる。オレはにこにこ顔の店員を一瞥して、に微笑みかけた。の腕をひっぱった。




「帰んよ」

「え?お金は?」

「は?お前、オレが払うと思ってんの?ブラックスーツに払わせるよ」






オレを何だと思ってんだよ?そういう念を込めたような言い方をすると、意味がわかったのかわかってないのか、そっか、と一言言って車に乗り込んだ。 しばらくすると金を払っていたブラックスーツは戻ってきて車を発進させた。街を歩いている奴らは、こんな高級な車体は珍しいのか じろじろと見ながら通り過ぎて行った。見てんじゃねーよ、FUCK!ナメてっと殺すぜ?




「ベル、楽しそうだね」

「うしし、わかる?この街の奴らが気に食わなくてさ」

「じろじろみてるもんね」

「まじ分を弁えろってな!殺されてーのかよ、笑えるんだけど」




オレがニヤニヤしながらいうとは固まって動かなくなった。「ー?」顔を覗き込むと顔が真っ青になっていた。は?





「なに、どーした?」

「…怖い」

「あ?」

「あたし、おかしいんだよ」





震えた、泣きそうな声で言うからオレはどうすればいいのかわからなくて、黙って顔を覗き込んだままでいた。すると、知ってるでしょ、とが呟いた。




「あたしはたくさん殺したの」

「知ってる、16人だろ?」

「…あのときから、あたしはあたしじゃなくなった。殺しておいてあたしは、あたしは」

「ん?」

「ダディとマミーを殺した奴らが死ぬほど憎かった。殺したいと思ったんだよ、今まで普通に暮らしていたあたしが」

「それでお前は殺したんだろ?その死ぬほど憎かった奴らをさ」

「其の時は何も考えて無かった…頭が真黒になって。でも気がついたらあたしは血だらけになってた。あたしの血じゃなくて全部、他人の血」





ふと見るとの手は震えていて、何を思ったのかオレはのうつむいてる頭をポンポンと撫でた。は泣きそうな顔でオレを見た。その時自分の中の何かが、色をそのまま塗り替えられたような気がした。