04 「たっだいまー!」 「お、おじゃましま、す?」 こんにちは!日本生まれの東洋系イタリア人(?)です!あたしは今ベルに連れられてやっとヴァリアー?の屋敷についたところです。ベルからのヴァリアーという存在の説明はそんなに詳しくはされていない。 イタリアマフィアのボンゴレファミリー、最強暗殺部隊、ヴァリアー。ベルの他に後5人居るらしい。えーどうしよう、緊張してきた…!レッドカーペットが果てしなく続いている廊下を 歩き続けると、左側の階段から、頭が派手な色をした男の人が降りてきた。 「あら、ベル!帰って来たの、ね…」 え?今「あら」って言ったよね。男?女?どちらかわからない(でも外見は完全に男)(なんかガタイいい)、ベルと同じ制服を着た人はあたしを見た瞬間に固まってしまった。 なんですか、あたしなにかしましたか!あたしがえ?え?ってなってるとその人がいきなりあたしに近づいてきて、顔を大きい手で包み込んだ。 「ただいまルッスーリア!」 「この子なの?!スカウトした子って!何て可愛らしいの!」 「あ、こんちは、です…!?」 「知ってるわ、監禁されてたんですって!?もう信じられないわね、もちろん潰したのよねベル?」 「とうぜーん!ボスが処理してくれるらしいしラッキーだったよ。それよりルッスーリア、が吃驚してる」 あたしが唖然としているとルッスーリアと呼ばれた人は「あらごめんなさい!」こんな可愛い子滅多に見ないからつい!と言ってあたしから手を離した。いや、 あたしそこまで可愛くないしそこまでされるような奴じゃないんですよ本当に! 「あたしはルッスーリア、ヴァリアーの一人よ。よろしくねちゃん」 「ちなみに、こいつがさっき言ってた、」 オカマだよ、と耳打ちされた。ああ、なるほどこの人が!いきなりベルが内緒話をするのでルッスーリアさんがきょとんとしてた。 「こちらこそよろしくお願いします、ルッスーリア、さん?」 「ええ、仲良くしましょうね!」 そう言ってルッスーリアさんはあたしの頭を猫をなでるように手を滑らせた。あたし、この人、すごい好きだ!サングラスで見えないけど、口元がにこにこしてたので、あたしもつられて にこにこしてたら、隣でベルがところでさ、と話を始めた。 「ボスは部屋にいる?」 「居ると思うわよ。あたしもさっき部屋の前通ったんだけどね。スクアーロの声がしたから、任務の報告でもしてるんじゃないかしら」 「おっけー、じゃあちょっと行ってくるわ!行くよ、」 「え、あ、え?」 「説明したじゃんさっき!決定を下すのはボスなんだ。だから今からお前を見せに行くんだよ」 「ああ、そっか。…じゃあ、ルッスーリアさん、これで」 軽く会釈をすると、「そういやルッスーリア、こいつの髪切ってやってくんない?伸ばし切ってボサボサなんだよ」とベルがあたしの髪を見ながら言った。だから、好きでこんな髪してるんじゃないのに…! するとルッスーリアさんが「あたしが切っていいのね?じゃあ、ボスへの謁見が済んだらあたしの部屋につれてきなさいな、ベル。」と嬉しそうに声を弾ませた。 わかった、じゃあ後でと一言交わすとベルはさっきルッスーリアさんが降りてきた階段に足を進ませた。あたしはもう一度ルッスーリアさんに会釈をすると手を振って返してくれた。 うわ、やっぱり好きだ、ルッスーリアさん! 「ベル、あたしルッスーリアさん好きだよ!」 「へー、良かったじゃん。うしし、相当気に入られてたなお前!」 「嬉しいな、初めて会ったのにあんなにあたしと楽しそうに喋ってくれた人って、」 今まで居なかったから、と笑うとベルが不思議そうな顔をして言った。 「そーなの?お前って金持ちだったんだろ?メイドぐらい居たっしょ」 「メイド?ああ…居たけどそんな多くないよ、雇って4,5人だったから。マミィのパパがお金持ちだっただけだもん」 「政治家だろ?」 政治家の孫がマフィアになるなんて、笑っちゃうんだけど。そう言ってはははっと乾いた声でベルが笑った。ほんとだよね、と返して、胸のあたりまで来ている髪をくるくると弄んだ。あたしに、友達と呼べる友達は 居なかった。人並みに学校にも通って人並みに、いやそれ以上に友達は沢山居た。でも、心から信頼を置ける友達は、居なかったと思う。いつも心のどこかで警戒していた。 別にどうされることもないのに、あたしの防衛本能が働いているとしか思えない感情が、どこかしこから湧き出ていたのは覚えている。 階段を上りエレベーターで上昇する。どうやら「ボス」は最上階に居るようだ。つーか屋敷って、これもう江戸城みたいなもんじゃん(よくわからないけど)、いや広い広いとは思ってたけどここまで とは思わなかった。5の数字のところまで上がるとカーン、と鐘が鳴ったような音がして、勢いよく扉が開いた。ベルは何も言わずに床を踏む。前髪で隠れている目は何を考えているか さっぱりわからない。書斎のような、いかにも映画のようなドアが目の前に広がる。 「ボス、入るよ」 ベルがコンコン、と手の甲で軽く叩いたあと声を掛けてガチャ、とドアを開けた。ベルに続いて入る時に、何か言った方がいいのかと思って、失礼します、となるべくいつもの 声を出すように心掛けながら呟いた。部屋の中央に設置してある広いデスクの正面に、銀髪ですごく長い髪の男の人が居た。「う″お″ぉぃ、ベル、帰ったのかぁ」と間延びした声で ベルに声をかけた後、目を見開いた。、デスクに両足を掛けた怖そうなお兄さんがこちらをジロリと睨んで、 手に持っていたワインを飲みほした。この人が、…ボス。もっとおじいちゃんを想像していたけどその全く正反対の、若い男の人だった。 「来たか」 「ただいまボス。こいつが例の子供だよ」 「…だな?」 「はい」 「…こっちへ来い」 指でくい、と合図をされて、あたしは銀髪の人の後ろを通ってデスクを横切り、ボスの手が届くところまで来た。握っている手に、汗が滲む。 どうやらあたしはどうしようもなく、この人の気に当てられているらしい。この部屋全体を包み込むようなオーラに、吸い込まれてしまいそうだった。 「監禁されてたそうじゃねぇか」 無意識に身体が反応するのが分かった。あたしがたじろいだのを見て「ボス」はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。 「はい」 「ミラノファミリーの奴を18名殺したそうだな」 「そうです」 「その時の気分は?」 「…気分?」 どうだったのか、とあの時の記憶を探る。といっても自分が血だらけになって立っている記憶しかなかったのだけど。どうかと聞かれれば。 「悪くなかったです」 あたしの言葉とを聞いてベルと銀髪の男の人が唖然としたのを感じた。あたし、そんな変なこと言ったかな。いや、変だ。あたしは確かにさっき自分のことを怖い恐ろしいと思っていたのに。 あの時の記憶を、少しだけ思い出したような気がした。ほんの少し、コンマ数秒の世界、誰かが甲高い声で笑っている。すると「ボス」がふ、と顔を歪ませた。怖そうな顔から一変、楽しそうな 笑顔に変わった。笑い声が響く。ベルと銀髪の男の人が驚いてボスに声を掛けている。 「はっははは、こりゃあいい、傑作だ!」 「ボス…!?」 「う″お″ぉい、どこに笑いのツボがあんだぁ…!?」 「うるせぇよ黙れカス鮫が」 ガシャァァン!と持っていた空のグラスを銀髪に向かって勢いよく投げた。うぉっ!?と目標にされた銀髪の男の人は寸前のところで避けて、後ろで砕け散ったグラスを恐る恐る振り返った。ベルは そんな男の人を見て爆笑している。…そこは笑うところなの?失敗した、本格的に茫然としちゃったよあたし。 「なっ、なにしやがんだぁ!!おっちぬとこだったぞぉ!?」 「お前が死んだら海に流してやるよスクアーロ!鮫の餌食だよ良かったじゃん!」 「っざけんじゃねぇベルフェゴール!で、どうすんだぁボス!」 そのガキ、とあたしとボスを交互に見て「スクアーロ」と呼ばれた人は言った。ボスはゆっくりと立ち上がって、あたしを見降ろした。この人、たくさん殺してる。根拠はないけど、マフィアにしては 当たり前のことをすごく強く感じた。ボスが手を持ち上げる。殴られる、と思ったあたしは身を固めたが、その判断はあえなく勘違いに終わった。いや、勘違いでよかった。ボスはあたしの頭をゆっくり 撫でた。 「偽名や武器やらは明日だ。」 「え?」 「お前は、今日からオレ達と同じ、闇の世界で生きてもらう。口答えは聞かねえ。いいな」 「…はい…!よろしくお願いします、…ボス?」 「オレはザンザスだ。」 「あ、じゃあ、ザンザス、さん?」 あたしがそう言うと、ベルが「うわっバカ!」と慌てた声を出した。「スクアーロ」さんは冷や汗をかいている。え?名前で呼んじゃいけなかった?不安になってきているとザンザスさんが もう一度あたしの頭をなでた。 「好きに呼べ」 「はい!」 「…奇跡だ…」 「ボス、よっぽどあのガキが気に入ったんだなぁ…」 「殺されるかと思ったもんオレ」 「オレなんか思わず冷や汗かいちまったぜぇ、あー怖かった」 → |